2014.6.3

神輿とHKF(早川カヤックフィッシングクラブ)と。

太閤秀吉の天下統一に最後まで抵抗した北条氏がおさめた小田原。かつては関八州の首都であったこの町には、今なお、あちらこちらに城下町の息づかいが残っている。毎年五月の連休になると、北條五大祭りが町を祭り一色に染めあげる。
この祭りにおいて、居神神社大神輿の担ぎ手として、ひときわ大きい掛け声でならしているのが、早川カヤックフィッシングクラブ会長の土方さん。

北條祭りには小田原やその周辺から各神社の神輿が集結するが、早川漁港も近い国道一号線沿いにある居神神社の氏子には、海で鍛え上げた漁師らも数多い。この猛者たちが担ぐ居神神社・大神輿は、他とは異なる二点棒という機動的なスタイルで、封鎖した国道1号をかっ飛び、海に突っ込み、おまけに倒れんばかりに左右に大きく神輿を振り回す「あおり」という豪快さで観客の歓声を集める。

二点棒は機動性が高い反面、担ぎ手への負荷が大きい。右棒と左棒のバランスがとれることはマレで、いずれかに傾いだようなかっこうで国道を突っ走る姿は、日常の調和をぶち破る迫力。もっとも傾いだ状態を、神輿の監督である「宰領(さいりょう)」たちは嫌うが。

「えいさあ」と土方さんが呼びかければ、担ぎ衆は「おりゃさあ」と受ける。他地域のような、わっしょいでも、おーりゃ、でもない。これが居神流。この大神輿、祭りクライマックスの夜の宮入りでは、神社への長い石段を上って行かねばならない。ここでも土方さんのひときわ大きな掛け声が、夜の石段に凛と響き渡り、滲んだ灯りのぼんぼりを揺らす。それに突き動かされるかのように神輿はまた一段、歩みを進めていく。

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土方さんと、愛艇のスキマー128。ヨットメーカーが手がけたカヤックで、波間を切り裂くような加速と巡航性能を誇る。

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リールはシマノ社のベイトキャスティングリールの名機、カルカッタ。「黒のダイバーも、意外とカッコいいですね」と土方さん。


担いでいく。それが早川スタイル。

小田原の早川に拠点を置くHKF(早川カヤックフィッシングクラブ)は、自動車運転教習所のベテラン教官でもある土方さんが創設した。忙しい仕事のあいまを縫い、家の近くでカヤックで釣りができる場所がないかと探し、自ら開拓。カヤックについては競技も行っていたという土方さんだが、魚を獲るということを教わったのは意外にも海育ちの奥さんからだという。

HKFがフィールドとするのは相模湾でも屈指の好漁場。定置網と刺し網銀座で、縦横無尽に漁師の縄張りが広がる。部外者が小舟で入り込もうなら即座に漁船に横付けされ、どやしつけられることだろう。HKFが活動をできるのも、海上で漁師に認められるまでの土方さんの地道な努力と、大神輿の担ぎ手としての霊験か。

こんな土方さんが会長であることと関係あるのか分からないが、HKFの会員は、皆、駐車場から浜までカヤックを担いで歩く。通常のカヤッカーはドーリーという運搬車を使うが、途中に石段の昇り降りもあり、浜辺もごろた石状の早川では、カヤックは肩に担ぐのがてっとり早い。石段と駐車場とのあいだは国道。担いだカヤックで浜降りする。偶然の一致か、居神神社大神輿と同じ手順なのだ。もしかしたら、土方さんにとってカヤックを担ぐことは、年に一度の晴れ舞台の練習も兼ねているのかもしれない。

えいさあ、おりゃさあ。

(写真・文・市原千尋)

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この日の獲物は良型カサゴをはじめ真鯛、サバ、イトヨリダイ。「このカサゴはちょっと自信ありますよ」・・カサゴはこのサイズに育つまでに10年はかかるという。

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家に帰れば家族のために板前になる。大漁のときは釣っているときは楽しいが、さばくのは大変だ。命を無駄にしないようスミズミまで生かす。さてこの日の晩ご飯は?


yamanaka

大海原を進むスキマー128。その機動性の高さを生かし、魚群を求めて20kmほど漕ぐこともあるという。しかし「足漕ぎカヤックがほしくなりました」という。けっして楽をしたいわけではなく、漕いでいる時間も釣りをしたいのだ。おそるべしカヤックフィッシャーマン。