2014.5.19

新作マリンマン・シーホースMOPを、海に連れ出す。

セラミックという人間の科学が生み出した素材。これがベゼルとなって天然貝由来のパールMOPのダイヤルをぐるりと取り囲む。
そのウォッチを支える堅牢感あふれるケースとバンド。
フィールドに持ち出してみて、初夏を感じさせる陽光の下にさらしたとき、この新しいマリンマン・シーホースのインドアでは分からなかった魅力が見えてきた。

5月15日に時計専門雑誌「腕時計王」とケンテックス・オフィシャルサイトにおいて同時にわれわれの目の前に現れた新しいマリンマン・シーホース。

 雑誌、ウェブの写真に写し出されていたシーホースも素晴らしかったが、室内で撮影されたものだった。このウォッチは強い真夏の光の下、あるいはアマモが揺れ魚の群れが泳ぐ海の中で見たときに、本来の魅力が発せられるはずだと考えた私は、海に持ち出してみたいという強い誘惑にあらがえず、ケンテックス社に無理をお願いして、撮影スケジュールぎっしりのシーホースの黒MOOPと白MOPの2本のプロトモデルを週末限定で借りることができた。

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大潮の晴天。波風ともに穏やか。干潮から1時間。海の風は早くも夏の薫りだ。

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ウォッチをかけているのはHONDEXの魚探。ふだんはランディングネットを置くために取り付けたステー。リールはアブガルシア社製のソルティーステージ・ジギングモデル。


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砂地に咲いていたハマヒルガオ。パドルはカマノ・カーボン・ベント。

いよいよ、海へ。

 浜辺での撮影を終えたあと、フィッシングカヤックのセッティングを行なった。午前7時とはいえ海辺の陽射しは強く、フローティングベストを着ると汗ばんでくる。

 カヤックはとにかく不安定だ。波が穏やかとはいえ、転覆(カヤックの世界では「沈(ちん)」という)の危険性はつねに伴う。舟に持ち込む道具類は鍛え抜かれ厳選されたものばかり。最低限の物を最適の配置に。
 ひとたび海に出てしまうと、立つことはもちろん、身をよじることさえ転覆の危険につながる。釣った魚を後ろのクーラーボックスに入れようとして「沈」するのは、ベテランカヤッカーでも一度は経験する。 だから道具の配置は盤石をめざし、毎回が試行錯誤である。

 たったウォッチ2つと思うなかれ。すべての道具は海に落としても大丈夫なようにリーシュという命綱によって、漕ぎ手か舟のいずれかに繋がれている。収納できるスペースと配置は、煙草の箱をもうひとつ余計に持つことさえ難しいぐらいだ。ましてや大切なプロトタイプのウォッチを2つも持ち込むことはあまりに危険すぎる。カメラも小型とはいえ、ふだんは積まない。
 悩んだ末、ホワイトベゼル+ホワイト貝パールの方を持ち込むことにした。グリーン+黒MOPは、またいつかの機会に。

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一眼レフを使った撮影はここまで。舟に積み込める機材には限りがあるのだ。

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おそれていた通り、舟に持ち込んだ小型カメラでは貝パールの美しい輝きが写真に表現できていない。

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パドルを漕ぐ腕の動きをさまたげるため、今のところ、ふだんはウォッチはつけない。撮影用に装着。


白ベゼルと白MOPは、キャプテン・エイハブに似合う?

 ひとつだけ舟に持ち込むウォッチとして、白MOPの方を選んだのには理由がある。
 このホワイトモデルの企画をケンテックスジャパン・ブランドマネージャーの丹羽さんから聞いたとき、私はまっさきにプロの漁師に似合うのではないかと思ったのだ。それも、ひとやま当てれば一攫千金のマグロ一本釣り漁師のような、危険と隣り合わせの荒れた海にくり出すような。いつもいっしょにいる相棒のような心強さ、あるいはゲンをかつぐお守りのようなものかもしれない。ロープのような太い釣り糸を引く漁師の腕にホワイトのマリンマン。なぜかそんな映像が浮かび、ぜひ企画を押し進めてもらいたいと思った。

 そして企画はこうして実現した。6月にはデリバリーが開始される。
 このホワイトモデルに対して、ちょっと実現不可能な願望を持っている。それは古典『白鯨』において、巨鯨モビーディックを生涯をかけて追い、挑みかけたキャプテン・エイハブの腕で輝いているところを見てみたい。想像するだけで痺れる。(ライター・市原千尋)

>マリンマン・シーホースの詳細

>【関連記事】MOP「真珠の母」がもたらす世界にひとつのダイヤル

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最初に釣り上げたのはソコイトヨリダイ。湯引きの刺身や、煮付けが美味い。

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シーホースに巻き付こうとするモンゴウイカ。地元ではスミイカと呼ぶ。


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プロトモデルのため、針は動かない。ムーブメントの重みや秒針の動きを感じることができなかったが、発売後は、ぜひもう一度、舟に持ち込んでみたいと思わせるウォッチだった。今回の撮影では、MOPの放つ魅力を伝え切れているとはいいがたい。MOPだけに焦点をあてたこちらの記事もぜひご覧ください。>MOPの魅力