2014.7.23

世界遺産登録の群馬県富岡。

「旅する腕時計」の第1回は、世界遺産登録に湧く群馬県富岡を訪ねました。

 春先に北海道の知床(世界自然遺産)に行ったときに驚いたのは、そのあまりの変わりよう。もう四半世紀も前、学生時代にオートバイで行ったウトロの町は、ほんとうにさびしかった。ところが今や深夜でも煌々と灯りがともり、高級ホテルが立ち並ぶ。24時間、入れ替わり立ち替わり客が出入りするコンビニ。外国人が多く、ここはほんとうに日本なのかと錯覚する洗練された町なみに変貌を遂げていた。
 これが世界遺産の力なのだ。
 知床の衝撃があったけだけに、群馬県富岡には、けっこう身構えて行くことになった。
  あれっ?・・。昔と変わらぬ落ち着いた町並み。
  変わったのは、富岡製糸場の裏手にあった無料の路上パーキングスペースが閉鎖され、少し離れたところに大形バスも駐車できる市営の大きな駐車場ができたこと、洒落た土産物屋やカフェが増えたことぐらいだろうか。ふつうの郵便局があり、地元のおばちゃんの軽自動車が走る。これは逆の意味での衝撃。これまでの地元の暮らしがそのままそこにある世界遺産というのも、あるんだ。

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富岡製糸場の正門。ポストはやっぱりこれ。

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年代を感じさせる守衛室はちょっと怖い。でもその横にはベンチが。


大渋滞を警戒したものの。

 渋滞や混雑を警戒して夕方5時前に現地に到着。しかし駐車場で警備員さんが怪訝な顔。
「これから見学じゃないですよね?」
 三連休だというのに、見学のため中に入れるのは午後4時30分が最終とのこと。お伊勢さんでさえ24時間参拝の時代に、なんと、まあ健全な世界遺産であろう。あわてて正門にむかって走る。かろうじて門は開いていて、写真は撮っていいですよ、とのこと。ありがたや。でなければ、何のためここまで来たのか分からない。記念すべき「旅する腕時計」の第1回である。何か「セカイイサーン!」を感じさせるものはないかと血眼で探す。
 けっきょく門の前のレンガの壁の前に陣取って一眼レフを取り出した。巨大な機材でひたすら壁に対峙する奇妙な男の姿を警備員も観光客も興味深そうに見ていく。視線さえ気にしなければ、ここはただの壁。誰にも邪魔されず集中して「セカイイサーン!」な絵を撮るのだ。
  10分を越えただろうか。なかなか納得の「セカイイサーン!」が撮れない。あたりまえだ。世界遺産とはいえ、これは、ただの壁だ。しかし今さらもう後には引き返せない。日は暮れはじめ、門は退場者が肩を通せるだけの幅を残して完全に閉ざされている。

 そのとき、奇妙なことが起こりはじめた。まわりにすごく濃い人の気配がする。振り返ってみて仰天。日本人、外国人、老若男女に取り囲まれている。みんな、邪魔くさそうな目でこちらを見おろしているだけでなく、もうガマンできないとばかりに強引に横に立ち並び、記念撮影する若者まで現れた。なかば、はじき飛ばされるかたちになると、いっせいにそれぞれが壁の前で記念撮影をはじめたのである。まるで私のせいで撮影待ちの渋滞ができてしまったような、やっとどいたよこいつ、という目線。これではまるで罪人である。ここはただの壁・・さっきまで誰ひとりいなかったのに・・。

(文・写真・市原千尋)

>コンフィデンス製品一覧

>富岡製糸場オフィシャルサイト


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ほんとうに、ただの「壁」なんです。

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今回の旅する腕時計は、KENTEXのエレガントスポーツラインのコンフィデンス。


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正門前で弾き出される、の図。

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長く愛用する初代MOPのコンフィデンスと新作コンフィデンス。


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後ろが、くだんの壁。セカイイサーン、してます?