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ボストーク コマンダスキー

旧ソ連・ボストーク社(=チストポリ時計工場)、1962年
旧ソ連の代表的な軍用時計。本来は正規軍人しか購入できなかった。公式復刻版含め膨大なバージョン違いがあるが、イラストは1970年代頃のものの一つ。

本物の証「заказ мо ссср」

ソ連の代表的なミリタリーウォッチの一つ。コマンダスキーは英語なら「コマンダー」を意味する。ソ連らしい、重厚武骨かつ派手なデザインと言えるだろう。本体は真鍮ベースにクロムメッキで光沢が強い。
製造元のボストーク社(社と言っても旧ソ連だけに、正式には「チストポリ時計工場」である)は、ドイツ軍が押し寄せるさなかの1942年、モスクワの一工場が黒海沿岸チストポリに疎開したところからスタートした。当時は時計どころの情勢ではなく、軍需品の製造に忙殺されていたが、それから20年、コマンダスキーの開発と同年にライプチヒ国際時計見本市で金賞を受賞、またソ連国防省の公式納入業者に指定されている。つまりメーカー自体がミリタリーとしてお墨付きなのだ。さらに、軍から派遣された品質管理者の検閲を通って初めてダイヤルに「заказ мо ссср(ソビエト国防省正式発注品)」の記載が許され、さらにはボートルグという、ソ連軍の身分証明書を必要とする店でしかコマンダスキーは購入できなかった。ただしボートルグは、ソ連崩壊間際の80年代後半には一般人もウエルカムな実態になっていたという。
第二次大戦中は時計はおろか歩兵2人にライフル1丁というソ連だけに、「заказ мо ссср」入りコマンダスキーなどは「少なくとも本来は」エリート向けの高級品であったはずだが、それでもベゼル目盛りの刻印が微妙にずれていたりするのは、旧ソ連らしい愛嬌と言うべきか。最近でもロシアあるいは旧ソ連諸国の土産物で売っていることがあるが、「заказ мо ссср」の記載がないものや、あっても他の時計の部品とツギハギされているようなものも多い。

時計界のAK47

ストークは2010年に一度破産したがその後活動を再開しているし、2004年にリトアニアのコリツ社がボストークヨーロッパというブランドを立ち上げ、ボストークのムーブメントを使用した時計を製造してもいる。そうして半世紀も続いているだけあって、コマンダスキーには全く外見の違う多数のバージョンが存在する。型違いだけではなく、例えば戦車兵向けに戦車の絵を入れたものなどもだ(子供っぽいと評するコレクターもいる)。Youtubeには、精密機械としては少々扱いが荒っぽい印象も受けるがこれら現代復刻版コマンダスキーの製造工程や、コマンダスキーを車で轢いても平気だという実験、北国らしい低温耐久テストの模様などの動画がアップされている。そうしたタフネスからか旧ソ連生まれという印象からか、「時計界のAK47」という異名も一部にあるが、伝統的な真鍮+クロムモデルの場合、チタンやステンレスにIPメッキという現代的な時計よりも、表面の傷付きにくさ・劣化しにくさという点では劣るだろう。