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ブライトリングナビタイマー

スイス・ブライトリング社、1952(54?)年
初代モデルは航空用回転計算尺を搭載した初の腕時計。イラストは1980年発売のナビタイマー2300型・イラク空軍仕様で、すでにクオーツ式かつデジタル表示併設という時代であるが、トレードマークともいえる計算尺は健在だ。

フセインの卒業証書

ライトリングナビタイマー・イラク空軍仕様は、湾岸戦争当時イラク空軍のパイロットらが所有しており、戦後オークションなどに流出するようになった。何タイプか存在するがイラストは2300型「ジュピター」で、クォーツ式かつデジタル表示付きという電子時代っぷりでありながら、アナクロな回転計算尺を搭載している。瓶の蓋のような凹凸のあるベゼルは手袋をしていても計算尺を回しやすくするためかもしれないし(その割に竜頭は大きくないが)、いかにも金属板というデザインのベルトともあいまって、ハードな印象を与える。
これらはパイロット訓練課程の修了時、自らも時計好きなサダム・フセインから贈られるもので、空軍パイロットとしてのステータスシンボルなのだという。捕虜になって没収でもされれば別だが、さすがにフセイン健在中にこれを外国人に売り払う度胸は出ないだろう。なおイラクにはダイヤルにフセインの写真が入った腕時計など、強烈なものも存在した。
同様のナビタイマー特別仕様は他にイラン・アルジェリアなど各国にも納品されている。イラストのイラク空軍仕様ではダイヤルにイラク空軍のマークが入っている(裏蓋にもアラビア語付きでイラク空軍の紋章がある)が、例えばイランバージョンではマークも違うし、「BREIGHTLING GENEVE」の下にペルシャ語が入る。

画期的だが謎の多い初代ナビタイマー

式には1952年発表とされる(実際は1954年だったはずだと結論する研究者も多いらしい)初代ナビタイマーは、初めてベゼルに航空用回転計算尺を搭載したクロノグラフ腕時計であった。ただし、航空用ではない回転計算尺なら1942年の「クロノマット」にすでに搭載されており、クロノグラフではないが1941年ミモ社(現ジラール・ペルゴ社)の「ミモ・ロガ」の方がさらに早い。
計算尺とは対数目盛を利用して掛け算・割り算を(長さの)足し算・引き算に変換するもので、例えば1cmが10(10の1乗)にあたるとすれば、3.2×32≒10の(0.5+1.5)乗=0.5cm+1.5cm=10の2乗=100(厳密な正解は102.4)、ということになる。航空用の場合は速度・所要時間・燃料量などの計算を目的とし、そのために使いやすく工夫された複数種類の目盛りが与えられる。当時の航空機はまだ、パイロットが自力でこのような計算をしなければならないことが多かったのだ。
ブライトリングは元々英空軍をはじめ航空関係とつながりが深かったが、ナビタイマーは航空機オーナー・パイロット協会AOPAから会員限定アイテムとしての要望が端緒だったとも、AOPAはすでに開発されていたナビタイマーにAOPAロゴを入れさせただけだとも言われ、はっきりしない。しかしいずれにせよ、ナビタイマーは数十年後のイラク軍パイロットがステータスシンボルとするまでになったのだ。また、ナビタイマーは映画「007 サンダーボール作戦」にもNATO軍パイロットの遺品として登場する。