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IWCマーク11

スイスIWC社(および同ジャガー・ルクルト社)、1948年
航空機のレーダー装備化に伴い、電磁波に耐えうる時計として、軟鉄シールドによる高い耐磁性を与えられた。1949年から英空軍など、英連邦諸国軍に納入される。1984年まで生産が続き、後継のマーク12(1994)~17(2012)も発売された。ミリタリーウォッチの中でも有名株のひとつ。

電子時代の耐磁時計

二次大戦中から戦後にかけて電波航法が一般化し、航空機は数ヶ所の「電波の灯台」から受けた電波の方向を頼りに、正確な飛行ができるようになった。また、敵機や敵艦、爆撃目標周辺の地形や建物を識別するための戦闘用レーダーも、軍用機に搭載されるようになった(ミサイル誘導用のレーダーはまだ先だ)。こうしたレーダーの発する電磁波は強力で、ポケットに入れてあったチョコレートがいつのまにか融けていたことから電子レンジの発明にも繋がったほどであり、英空軍は電磁波に強いパイロットウォッチを求めた。また北海上空の潮風に耐えるための防湿性や耐塩性、(最悪、機が被弾するなどした場合も含め)急減圧にさらされても外れない頑強なねじ込み式風防と一体型ベゼルなども必要であった。
こうしてまとめられた「6B/346」仕様、通称「マーク11」に従って、スイスのIWC社およびジャガー・ルクルト社が製造したものがこの時計である(ルクルト社は1953年までで、その後はIWC社に一本化された)。ムーブメントは透磁率の高い軟鉄性のインナーケースにすっぽりと覆われ、この軟鉄が磁力線を吸収してしまうために電磁場は内部まで及ばない。実測テストでは78000A/mの耐磁性能を示し、これは現在の尺度で考えてもハイレベルである。黒地のダイヤルは1952年からラジウム塗料により夜光化され、1963年に安全なトリチウム方式に変更された。
また飛行服の上からでもはめられるよう、ステンレス製でありながら任意の長さで締められる、クリップ状部品が連結した「ボンクリップ」バンドも付いた(のちナイロンバンドも登場した。革バンドは制式納入されてはいないようで、のち交換されたものか)。裏面には「6B/346」時計であることと、一度に発注された中での通し番号および発注年が刻印されている。英軍の場合、英国官給品であることを示す矢じり形の「ブロードアロー」マークも入る。

大事にされたマーク11

ーク11は1949年から英連邦諸国軍に納入された。レーダー灯台網は北半球しかカバーしていなかったため、オーストラリア空軍・ニュージーランド空軍・南アフリカ空軍などは関係なかったが、それら各国のパイロットたちもマーク11の示す時刻を頼りに、旧来の天文航法を行ったという。
英空軍ではおおよそ機長クラスにのみマーク11を支給し、分解するなどの蛮用を戒める注意書きを説明書に記載したらしい。メンテナンスは時刻と時計の管理に実績のあるグリニッジ天文台に委託され、最低でも12ヶ月(のち18ヶ月に延長)に1度、回収してメンテナンスに送ることが義務付けられた。製造元が2社であるため元々細かいデザインの差も存在したが、こうして支給・回収・修理が繰り返されたこと、さらに市販用も販売されたことで、マーク11の現品には様々なバリエーションが存在する。市販用には6B/346仕様に反する白ダイヤルのものや、耐磁性に欠ける真鍮製ダイヤルのものなどもあるようだ。
マーク11は1984年まで製造された(英空軍では70年代には主力パイロットウォッチの地位から格下げされ、納入は1981年までに終了した)。前述のように、IWC社がマーク11という商品名で開発した時計というわけではないが、1994年同社は後継のマーク12を発売し、今のところ2012年のマーク17にまで至っている人気シリーズだ。さらにマーク11以前の陸軍用「Watches Wristlet Waterproof」が、マーク11の源流ということで後付け的に「マーク10」と呼ばれるなどの現象も起こっている。