番組クォリティの空撮映像が十数万円のUAV機材で。

 ドローン、あるいはUAVという言葉を聞いたことがあるという人は少なくないだろう。「Unmanned Air Vehicle」の略で、無人航空機全般を指す。最近ではドラマやドキュメンタリーからスポーツまで。テレビ番組でラジコン・マルチコプターによる空撮映像を目にしない日はない。マルチコプター空撮映像の普及はここ数年でいっきに進み、空撮映像はもはや特別なものではなくなった。背景には番組での使用にたえる品質の映像を撮影できる機材が十数万円から売り出されていることや、制御機能の進化で高度な知識や技術がなくても誰でも簡単に飛ばすことができるようになったことがある。

 現在もっとも普及している空撮用マルチコプターは重量1kg程度の4枚プロペラタイプ。サイズもプロペラをはずせば、ふつうのスポーツバッグに機材一式が納まってしまう。4K映像にも対応した小型軽量のアクションカメラを搭載し、GPSとジャイロによる制御機能で手放しでも同じ高度、同位置を維持し、縦横の揺れに対しても「ジンバル」というスタビライザーがカメラブレを抑えてくれる。バッテリーの進化も大きい。小型高出力のリチウムポリマーバッテリーで25分程度のフライトができる機体も出てきた。

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マルチコプターによる空撮を世界中に普及させる起爆剤となったエポックメイキングな機材がDJI社製ファントム。付属品の白いプロポ(送信機)が発売当時は新鮮だった。10万円前後で販売され、アクションカメラのGOPROを積載できるマウントが装備されていた。

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ファントム2の最大の進化は、これまで扱いが難しかったリチウムポリマーバッテリーを誰でも手軽に使えるようにしたこと。電圧やバランス管理をコンピューターで制御したインテリジェントバッテリーは、フライト中もLEDで残量確認ができる。


プロ機ならずとも、遠隔カメラ制御や手もとでの映像確認も。

 2014年にファントムのモデルチェンジ機として発売されたファントム2は見た目こそ従来機と似ているものの、この短期間でここまで・・と唸らずにはいられない進化を遂げている。ファントム2の中核機である「ファントム2VISION+」の商品構成は、従来なら機体以上の価格と取り付けに専門知識が必要だったジンバルが標準装備となっただけでなく、4K対応の高解像度アクションカメラまでセットされている。もっとも驚いたのは、アマチュアには憧れのまとだった空撮映像のリアルタイム・モニタリングシステムまで含まれていたことだ。(モニターはスマートフォンを使用)
 従来の普及機では難しかった真下のアングルの撮影も可能となり、手もとで映像を確認できる。これだけのものが15万円以内で入手できて手軽に誰でも飛ばすことができるのだから、おそるべし、もはや家電のような感覚だ。

 世界中でテレビ番組の空撮映像を手がけるプロカメラマンの矢口氏によると、重量のあるプロ専用機を飛ばす前のテスト撮影のみならず、本番用としてもある程度までは使えるレベルに達しているという。そして普及機のみならずプロ用の機材も進化と低価格化は例外ではない。6枚のプロペラをもつヘキサコプターから8枚プロペラのオクトコプターへ、より重いカメラやシステムを安定して飛ばすことができるようになり、操縦者を必要としない自動航行の信頼性も増し、撮影のみならずさまざまな業界・用途での可能性が広がっている。

 最近、4枚プロペラの中型機でも機体自身が「目」を持ち自分の位置を確認し、これまでプロ機でも難しかった室内空間でのインドアフライトを手軽にした機材も30万円台で売り出されるなど、進化と陳腐化のスピードはとどまることを知らない。東京オリンピックが開催されるころには、いったいどうなっているのか、想像もつかない世界である。

(写真・文・市原千尋)

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プロカメラマンの矢口氏は、番組取材のため世界各地を飛びまわっている。この原稿が完成した日も、マイナス40度の白銀の世界で空撮をしているということだった。

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矢口氏のオフィスに飾られた年代を感じさせるオクトコプター。初めて本格的に空撮に参入した時代のメモリアル的な機体だ。日進月歩の世界だけに、数年前の機械がもはやレトロな展示物に見えるから不思議だ。


DSCF6762UAVとのコラボ。本来ならばパイロットウォッチのスカイマンシリーズにしたいところだったが、黒と赤の機体に合わせてブラックのマリンマンを。