昭和32年、国産初のアーチ式コンクリートダムが紅葉と温泉の名所として名高い鳴子峡の近くに落成した。

 堰体高95m、幅215mの巨大なアーチを描く重厚なコンクリート塊は、錦秋に染まった断崖の渓谷に深い楔のようにそびえていた。自然が手がけた複雑な地形と植生を断ち切るコンクリートのシンプルな曲線。人工物とはいえ半世紀もたつと、どこか厳かささえ感じる。
 これまで長らく多目的ダムとして利水、発電、治水を担い、地域の営みを守ってきた。また、荒雄湖と名付けられたダム湖の上流側には湖畔公園があり、キャンプ、バーベキューのほか、カヌー体験や水遊びもできるアウトドア・フィールドとして多くの人に親しまれている。

 毎年5月に行われる観光放流では、融雪水を8門のクレストゲートから放水された水が、白いカーテンとなって黒ずんだコンクリートのアーチに沿って流れ落ちるさまは春の風物詩となっている。

(文・写真・絵:市原千尋)

紅葉に染まった断崖とダム堰体。

鳴子ダムによってできた人造湖が荒雄湖。上流側に荒雄湖畔公園があり、キャンプ、バーベキューなどが楽しめる。

高さ95mのアーチ式コンクリートダムの天端は遊歩道になっている。下をのぞくと足がすくむ。

ダム完成時から30年に渡りダムの放流バルブとして使われたハウエル・バンガーバルブ。ドイツ人発明者二名の名前が冠せられたこのバルブは役割を終え、ダムサイトに展示されている。旅のお伴は2-14年秋に発売されたスカイマン・パイロットのシャイニンググレー(-11)。

美しくアーチを描くコンクリートは長い歳月と折からの雨で黒ずんでいた。新緑の季節になると、このコンクリートの表面を白いカーテンのように水が流れ落ちる。ぜひ見てみたいものだ。