舵を握れば、みな「船長」。

 竹芝桟橋は伊豆・小笠原諸島へと向かうフェリーが出港する南洋への玄関口。
 新橋駅から無人運転の東京臨海新交通ゆりかもめに乗って数駅。一帯は湾岸高速の高架が空と眺望を覆い、ここが海岸であることを忘れさせる。海岸からわずか500mほどのあいだに、東海道新幹線、山手線、京浜東北線、東海道線、横須賀線といった主要鉄道路線と、東京モノレール、ゆりかもめといった新交通、道路では第一京浜と首都高速が所狭しとひしめき合う。まさに交通の動脈が集中した場所なのだ。それでも周辺には芝離宮恩賜庭園のような緑豊かな空間も広がる。そして埋立地のあいまを縫うように運河がめぐらされ、舟が行き交う。

 そんな運河に面したオープンカフェの「木美(もくび)」に入ると、心癒やされる映像と音楽と香りに包まれた。それもそのはず。店内を羊水のようにやさしく浸す映像は、プロのテレビ番組カメラマンが世界中の世界遺産で撮影してきた選りすぐりのものばかり。世界遺産を眺めながら食べる人気メニューは、ずばり旅カレー。

 運河の方が少し騒がしくなったと思ってオープンテラスに出てみると、小さなクルーズ船が立ち寄るところだった。店から数人の男性が出てきて船を見つめる。係留した船からさっそうと降り立ったのは、つなぎ姿の男性。あっという間に男たちの輪ができて、楽しそうに話をしている。聞けばKanaRei号という船を共同で購入し、仲間でクルーズを楽しんでいるのだという。そう、舵を握ればみな船長。船長だけど、どこか少年のような目が印象的な大人たちなのでした。

(文・写真:市原千尋)

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カフェのオープンテラスでお茶を飲んでいると、白いクルーズ船が寄港した。

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たちまち船のまわりには男たちが輪になる。エスパイ・アクティブ(シルバー)を腕からはずし撮影。


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KanaRei号にちょっと乗せてもらいました。船のイグニッションキーって、フロントガラスの上についているんですね。計器類横のアナログ感あふれる時計がマッチしています。

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アナログのコンパスと、マリンマン・シーホース(ブラックIP)。実際の運行ではGPSがあるのでアナログコンパスを使うことはないそうですが、やっぱりダッシュボードの上にこれがあると気分が出るそうです。


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日ノ出町にある運河沿いのカフェ「木美」のコンセプトは「映像ダイニング」。飲み物や食事を供するだけでなく、お店のインテリアやコンセプトも売る新形態のカフェ。お店に入るときは、なんと靴を脱ぎます。>木美オフィシャルサイト